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2005年01月27日

共創のメタ知識:「要素、構造、機能」、「特徴、利点、利益」


■共創のメタ知識:「要素、構造、機能」、「特徴、利点、利益」

「創造学のすすめ」を読む。失敗学で有名な畑村洋太郎氏による創造原理の本。

この本によると創造の仕組みは「要素」「構造」「機能」で成り立っているという。要素はさまざまな形で結びつき、全体構造を作っている。構造は何らかの機能を持っている。そして、創造とは「要素や構造の組み合わせによって、新しい機能を果たすものをつくること」であると定義される。

デジタルカメラと携帯電話という二つの要素を組み合わせると、デジカメ付携帯電話という全体構造ができる。カメラの機能と電話の機能の足し算になっているのはもちろん、新しい機能も生まれる。

外出先から写真をアップロードしてWebで報告する機能、簡易プリクラ機能、写真をメールで交換する機能など、デジカメ、カメラ単体では難しかった、新たな機能が発生している。これが創造された機能である。

なるほど、と思った。「要素」「構造」「機能」という分け方で頭が整理される。

企画の会議で、アイデアを探しているときに、まったく新しい要素や構造を考えようとして、煮詰まってしまうことは多い。古今東西誰も考えたことのない要素はそう簡単にはみつからない。大抵は広く市場を調査すると、その組み合わせは過去に既に発案、実現されていたりする。世界で60億人の人間が日夜思索しているのだから、どんな組み合わせも既にあるのは、当たり前かもしれない。

ある企画がヒットするかどうかは、時代や市場の状況という文脈の中で、具体化されるときに、持てる機能が明確になるかどうかで決まるということだろう。この本では、アイデアの具体化には、体験や経験の量や質が重要であるとしている。抽象概念から具体化するのではなく、具体化したものを抽象化で検証し、具体に戻せというようなアドバイスがある。

この要素、構造、機能に分けて考えよという考え方は、以前読んだ「ソリューションセリング」という本に書かれていた営業上の、「特徴」、「利点」、「利益」の説明に似ているなと思った。こちらは、営業するときに、フィーチャー(特徴)、アドバンテージ(利点)、ベネフィット(利益)を区別して話すべき、という考え方で、例えば、コーヒーカップを売るのであれば、

フィーチャー :特徴
このコーヒーカップには取っ手があります
アドバンテージ:利点
それがあなたの指を火傷から守るでしょう
ベネフィット :利益
それはあなたが避けたいと思っていたことですよね

ということになる。売り手が考えるべきはベネフィットなのだ。

私はコンサルタントなので、売れる商品、売るためのメッセージを考える会議に毎週参加する。うまく行くチームの会議は、「構造」「要素」「機能」、「特徴」、「利点」、「利益」の違いや、どれを今考えるべきなのかというメタ知識を共有しているように感じる。インタラクションの過程で、常に発言が「機能」や「利益」になっているかを検証しようという意識があると、会議は効率よく終わる。

従来の発想支援というと分かりやすいツールやメソッドに注目が集まりがちなのだけれど、こういった幾つかの原理、共創のためのメタ知識を共有しておくことも重要だと考える。

投稿者 webmaster : 2005年01月27日 14:25

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